社会保険労務士ってどんな資格?
社会保険労務士は、企業における採用から退職までの労働保険・社会保険に関する問題や、年金に関するエキスパートです。
実際の業務としては、企業内部で各種手続きや労働問題に対応する勤務社会保険労務士と、企業から委託を受けて手続やコンサルタントを行う開業社会保険労務士とがあります。
独占業務
社会保険労務士には、大きく2つの独占業務があります。
手続代行
- 労働保険および社会保険に関する法令に基づいて申請書等を作成すること。
- 申請書等について、その提出に関する手続を代行すること。
帳簿作成
- 労働保険および社会保険に基づく帳簿書類(労働者名、賃金台帳、出勤簿、就業規則など)を作成すること。
ただし社会保険労務士の独占業務は有償独占のため、報酬を受け取らなければ無資格者でも行うことができます。
試験科目・形式
1.労働基準法【労基】
労働条件の最低基準を定めた法律です。労働者を保護するため、使用者に一定の制限を設けていいます。
2.労働安全衛生法【安衛】
労働災害から労働者を守り、業務災害の発生を未然に防ぐために様々な規定を設けている法律です
3.労働者災害補償保険法【労災】
労働者の業務中の災害や疾病(業務上災害)、通勤途中の災害(通勤災害)に対しての給付等を定めた法律です。
4.雇用保険法【雇用】
労働者が失業した場合の給付や、就職を促進するための給付等を定めている法律です。コロナ禍において重宝されている雇用調整助成金も規定されています。
資格取得の際に、講座等の受講料の一部を支給してくれる教育訓練給付制度も、雇用保険に定められています。
5.労働保険の保険料の徴収等に関する法律【徴収】
労働保険料の徴収方法や加入手続きなどについて定められている法律です。
6.労務管理その他の労働に関する一般常識【労一】
労働契約法等の労働関係法規、労働統計等の労働経済など、労務管理に関する様々な分野の出題があります。
7.健康保険法【健保】
薬剤師として働く上で身近な健康保険法からも出題があります。扶養の考え方や、協会けんぽ・健康保険組合についての出題もあります。
8.厚生年金保険法【厚年】
会社員の老齢や障害、死亡に関する給付を定めている法律です。
9.国民年金法【国年】
自営業の方などの老齢や障害、死亡に関する給付を定めている法律です。
10.社会保険に関する一般常識【社一】
国民健康保険法や高齢者の医療の確保に関する法律、介護保険法などの社会保険関係の法規、医療や年金の各制度の沿革など、社会保険に関する様々な分野の出題があります。
試験の形式
試験の形式としては、1日で選択式と択一式を受けることとなります。
出題形式 | 試験時間 |
選択式 | 10:30~11:50(80分) |
択一式 | 13:20~16:50(210分) |
合格ライン
合格ラインは、選択式および択一式の総得点と、それぞれの科目の得点に基準点が定められ、それらの点数を上回る必要があります。
【総得点】
- 選択式:24点以上/40点満点(年によって上下あり)
- 択一式:45点以上/70点満点(年によって上下あり)
【基準点】
- 選択式:各科目3点以上(年によって上下あり)
- 択一式:各科目4点以上(年によって上下あり)
上記の通り、年によって上下はありますが、選択式も択一式もだいたい満点の6割~7割が合格ラインになります。また、年によって救済科目がある場合もあります。難易度が高すぎた科目は、3点以上のところ2点でも合格になるというものです。
実際に2021年は、選択式の労一で1点以上、国年で2点以上の救済が入りました。
合格率
2021年の合格率は7.9%となりましたが、社会保険労務士試験の合格率はだいたい5%~7%で推移しています。救済科目の設定により合格者数を調整しやすく、実際に合格者数も合格率も大きく上下しないことから、受験者の中でいかに上位2500人以内に入るか、といった試験とも言えます。
受験申込数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
2021年 | 50,433 人 | 37,306 人 | 2,937 人 | 7.9 % |
2020年 | 49,250 人 | 34,845 人 | 2,237 人 | 6.4 % |
2019年 | 49,570 人 | 38,428 人 | 2,525 人 | 6.6 % |
2018年 | 49,582 人 | 38,427 人 | 2,413 人 | 6.3 % |
2017年 | 49,902 人 | 38,685 人 | 1,770 人 | 6.8 % |
受験資格
社会保険労務士試験を受けるためには、いずれかの受験資格が必要になります。以下に主な受験資格を挙げていますが、他にも多数あります。ただ薬剤師であれば大学を卒業しているはずですので、特に気にする必要はないかと思います。
【学歴】
- 4年制大学で(在学中を含む)一般教養科目の学習が終わった人
- 大学(短期大学を除く)において62単位以上を修得した人
【資格】
- 司法試験第1次試験に合格した人
- 行政書士の資格を持っている人
【職歴】
- 国家公務員または地方公務員として行政事務に従事した期間が通算して3年以上になる人
- 社会保険労務士または弁護士業務の補助の事務に従事した期間が通算して3年以上になる人
- 国または地方公務員として労働社会保険諸法令に関する事務に従事した期間が通算して3年以上になる人
勉強時間
社会保険労務士試験に合格するのに必要な勉強時間は、800時間~1,000時間と言われています。
薬剤師・薬局業務への活かし方
薬剤師も労働者であり、労働基準法や労働安全衛生法は、働くうえで知っておいて損は無い法律です。特に管理職など目指す方にはオススメです。
また、健康保険法についても詳しく学ぶことができ、特に高額療養費制度などは知っておくと、患者さんの役に立つことも多いと思います。
試験データ
資格名 | 社会保険労務士 |
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資格区分 | 国家資格 |
受験資格 | あり |
合格率 | 5%~7% |
試験料 | 15,000円 |
試験日 | 例年8月第4日曜日 |
問い合わせ先 | 全国社会保険労務士会連合会 試験センター |
試験の概要
【願書請求受付】
例年3月~5月末まで願書請求を受付。
【願書受付】
例年4月中旬~5月末。
※例年4月中旬に試験詳細が公示されます。
【本試験】
例年8月第4日曜日。
【合格発表】
例年11月上旬。