法律系

弁理士

弁理士ってどんな資格?

弁護士と間違われることもある弁理士ですが、弁理士とは知的財産権に関する手続き業務を行うことのできる者のことです。

発明(優れた技術的思想の創作)・意匠(斬新なデザイン)・商標(商品やサービスのマーク)などを特許権・意匠権・商標権等として特許庁への出願手続の代理業務や、それらの権利を取消・無効とするための審判請求手続・異議申立て手続の代理業務を行います。

近年は手続代理業務だけでなくコンサルティングや紛争処理など、社会のニーズに合わせて様々な分野に広がりを見せており、今後の活躍にも期待ができる資格です。

 独占業務

弁理士には、

  • 特許等に関する特許庁への申請代行業務

が独占業務として認められています。またその他にも、特許に関する訴訟や仲介など、弁護士と弁理士にしか認められていない業務も多くあります。

試験科目

弁理士試験は、受験資格に制限がなく、国籍・学歴・年齢問わず誰でも受けられる試験です。

筆記試験である短答式試験・論文式試験に合格したうえで、口述式試験にも合格して初めて弁理士試験合格となります。

また、短答式試験、論文式試験にそれぞれ免除制度が設定されており、薬剤師の資格を持っていることで論文式試験の一部を免除されます。

 短答式試験の科目

全7科目から出題され、マークシート方式です。
問題数は60問、試験時間は3.5時間になります。

試験形式 五肢択一式
問題数 60問
試験時間 3.5時間
  • 特許法(17問)
  • 実用新案法(3問)
  • 意匠法(10問)
  • 商標法(10問)
  • 条約(10問)
  • 著作権法(5問)
  • 不正競争防止法(5問)

 

短答式試験に合格すると、翌年と翌々年の2年間、短答式試験を受験することなく論文式試験を受験することができるよ。

論文式試験

短答式試験に合格すると論文式試験を受けることができます。
論文式試験には必須科目と選択科目の2つがあります。

 【必須科目】

  • 特許法・実用新案法
  • 意匠法
  • 商標法

 

【選択科目】

  • 理工Ⅰ:機械・応用力学
  • 理工Ⅱ:数学・物理
  • 理工Ⅲ:化学
  • 理工Ⅳ:生物
  • 理工Ⅴ:情報

 

選択科目は、出願のタイミングで上記5科目から選択します。
薬剤師資格を所持してる場合には『理工Ⅲ:化学』が免除となるため、論文式試験は必須科目のみの受験となります。

なお、必須科目と選択科目は別日に試験が行われます。

必須科目 特許法・実用新案法:2時間
意匠法:1.5時間
商標法:1.5時間
選択科目 選択科目:1.5時間
論文式試験は、必須科目に合格すると翌年と翌々年の2年間、論文式試験の必須科目が免除されるよ。選択科目に合格すると、それ以降ずっと選択科目が免除されるよ。

 口述式試験 

論文式試験に合格あるいは免除となった場合、口述式試験を受けることができます。
口述式試験では

  1. 特許法・実用新案法
  2. 意匠法
  3. 商標法

 

について、それぞれ10分程度の口頭試問が行われます。
採点は①~③についてそれぞれ

  • A(良)
  • B(普通)
  • C(不十分)

 

の3段階で評価され、C評価が2個以上なければ合格です。

弁理士試験の免除制度

ここまでにも一部紹介しましたが、弁理士試験には免除制度が存在します。

 短答試験の免除

以下の条件に当てはまる人は、短答式試験の受験が免除されます。

  • 2年以内に短答式試験に合格
  • 2年以内に、大学院にて工業所有権に関する科目の単位を取得(ただし免除される出題科目は工業所有権のみ)
  • 5年以上、特許庁の審判又は審査の事務に従事(ただし免除される出題科目は工業所有権のみ)

 

工業所有権とは一般的に、特許権・実用新案権・意匠権・商標権のことを言うよ。
工業所有権に関する科目が免除の場合は著作権法と不正競争防止法だけ受験するんだね。

 論文式試験(必須科目)の免除

以下の条件に当てはまる人は、論文式試験(必須科目)の受験が免除されます。

  • 2年以内に、論文式試験(必須科目)に合格
  • 5年以上、特許庁の審判又は審査の事務に従事

 論文式試験(選択科目)の免除条件

以下の条件に当てはまる人は、論文式試験のいずれかの選択科目の受験が免除されます。

  • 過去、論文試験(選択科目)に合格
  • 選択科目に関する修士又は博士の学位を保持
  • 専門職の学位を保持
  • 技術士、一級建築士、技術士、一級建築士、第一種電気主任技術者、第二種電気主任技術者、薬剤師、情報処理技術者、電気通信主任技術者、司法試験合格者、行政書士、司法書士の資格を保持
  • 5年以上、特許庁の審判又は審査の事務に従事

合格ライン

【短答式試験】

  • 全科目合計:65%以上
  • 各科目:40%以上

【論文式試験(必須科目)】

  • 全科目合計:54%以上
  • 各科目:47%以上

【論文式試験(選択科目)】

  • 60%以上

【口述式試験】

  • A,B,C評価にて判定 2科目以上でC評価がないこと

合格率

弁理士試験の合格率は以下の通りです。

受験者数 合格者数 合格率
2020年 2,947 人 287 人 9.7 %
2019年 3,488 人 284 人 8.1 %
2018年 3,587 人 260 人 7.2 %
2017年 3,912 人 255 人 6.5 %
2016年 4,211 人 296 人 7.0 %

なお、この数値は試験全体の合格率であり、各試験の合格率は

  • 短答式試験:約20%
  • 論文式試験:約25%
  • 口述式試験:約95%

このくらいの数値で、この数年は推移しています。

勉強時間

弁理士試験の合格に必要な勉強時間は、 3,000時間前後といわれています。

薬剤師・薬局業務への活かし方

薬剤師業務や薬局業務に直接活きることは少ないかもしれません。

しかし医薬品は知的財産権の集合体です。医薬品の研究や製造の過程で様々な知的財産権が絡んでいます。「特許の取得によって医薬品の研究開発が遅れている」という批判もありますが、特許を取得することで、製薬企業が多大な資源を研究開発に投入できているという見方の方が大半です。

このように弁理士試験の勉強をすることで、医薬品について他の薬剤師や調剤事務とは少し違った視点を持つことができます。

試験データ

資格名 弁理士
資格区分 国家資格
受験資格 なし
合格率 10%未満
試験料 12,000円
試験日 令和3年は・・・
短答式試験:7月18日(例年は5月頃)
論文式試験(必須科目):8月29日(例年は6月下旬~7月上旬)
論文式試験(選択科目):9月19日(例年は7月下旬~8月上旬)
口述試験:12月(例年は10月)
問い合わせ先 特許庁>弁理士試験