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宅地建物取引士(宅建士)

宅地建物取引士ってどんな資格?

宅建士は、毎年20万人前後の受験者数を誇る最大規模の国家資格です。
試験に合格することで、土地や建物などの不動産取引に関する実務および法律上の専門知識を持つ「不動産取引の専門家」となることができます。
高額な不動産の購入は、一般の人にとって一世一代の買い物。しかし、多くの人は不動産の取引に関して知識や経験がほとんどありません。そこで、購入者や借主が不利益を被らないよう法律的なチェックやアドバイスをするのが宅建士です。

 独占業務

購入者や借主が不利益を被らないよう、以下の3つの業務は宅建士しか行えない独占業務とされています。

  • 重要事項説明
  • 重要事項説明書への記名・押印
  • 契約書への記名・押印

つまり、宅建士がいないと不動産の契約をすることが出来ないのです。

 重要事項説明

宅建士は借主・買主に対して、不動産契約の前に、宅地建物取引士証を提示しながら「重要事項の説明」を行います。重要事項としては、
・物件の設備状況
・売買代金のローン条件
・支払時期
・駐車場の有無
・契約の解除条件
など、借主・買主が契約前に必ず知っておくべき事項であり、法律で定められています。
新しく部屋を借りる時など、この「重要事項の説明」を受けた経験もあるのではないでしょうか。

 重要事項説明書への記名・押印

重要事項は口頭で説明するだけでなく、文書に記載して説明する必要があります。そして記載内容を説明したうえで、この文書に記名・押印します。
この重要事項説明書への記名・押印も、宅建士の記名・押印が義務づけられています。

 契約書への記名・押印

契約が成立したときに交付される契約書にも宅建士が記名・押印します。

このように、不動産の取引は事実上、宅建士がいなければ成立しません。
そのため、不動産を扱う事務所においては、業務に従事する者5名につき1名以上の宅建士を配置することが法律で定められています。
こういった理由から、宅建士には常に一定以上の需要があると言えます。

試験の形式と科目

宅建士試験には受験資格が無いので、誰でも受験が可能です。

 試験形式

宅建士試験は、2時間で50問を解く試験です。
四肢択一のマークシート形式のため、分からない問題でも25%の確率で正解することが可能です。また
記述式の問題がないため、比較的取り組みやすい試験といえます。

出題形式 四肢択一式
出題数 50問
試験時間 13:00~15:00(120分)

ただし、宅建業に従事しており登録講習を受講して修了した方は、50問のうち5問が免除され、試験時間も13:10~15:00(110分)となります。

 試験科目

宅建士試験の科目と配点は以下の通りとなっています。

権利関係 14問
宅建業法 20問
法令上の制限 8問
税その他 8問

5問免除者については、「税その他」が5問免除され3問となります。

 権利関係

権利関係では、民法(抵当権、賃貸借、相続など)を中心に、借地借家法(土地や建物を借りる人を保護する法律)や不動産登記法(不動産の登記に関する法律)について出題されます。
宅建士試験の民法は他の法律系の資格と比べると簡単ですが、民法そのものの範囲が非常に広いうえに、深く勉強しようと思えばいくらでも勉強できてしまうため、いかに程よいところで他の科目の勉強にうつるかが重要となります。

 宅建業法

宅建士のメインともいえる宅地建物取引業法からの出題になります。
業として宅地建物を取引するときに適用される法律で、重要事項の説明契約書に記載すべきこと宅建免許に関することなど、宅建士として働いていく上で大切になる内容が定められています。
権利関係と比べるとボリュームは少ない割に配点は大きく、宅建業法でいかに高得点を取るかが宅建士試験で合格するための秘訣ともいえます。

 法令上の制限

土地や建物に対する、法律等による制限に関する出題です。
・国土利用計画法
・都市計画法
・建築基準法
・農地法
など様々な法律について学びますが、自分が家を建てる際に役立つような知識も多く、意外と勉強してて面白い科目です。ただし配点があまり大きくないので、面白いからといってハマり過ぎは厳禁です。

 税その他

不動産に関する税金や、その他関連知識について出題されます。
不動産に関連する税金としては印紙税不動産取得税固定資産税などがありますが、その他にも不動産鑑定評価基準不当景表法住宅金融支援機構法などからも出題されます。
範囲が広いため、過去問などから出題傾向を予想し、要点を押さえた勉強が必要となります。

宅建士試験では、どんな問題が出題される?宅建士試験の受験を考えている方。 実際に宅建士試験ではどのような問題が出題されるのか、気になる方も多いと思います。 この記事...

合格ライン

宅建士試験は、受験者数の増加とともに少しずつ試験も難化傾向にあります。
そして合格ラインも、徐々にですが上がりつつあります。
以前は7割(35点)取れば安心でしたが、近年では8割(40点)が目標となってきています。ただし科目ごとの基準点が無いため、得意科目で得点を稼いで合格することも可能です。

2020年 10月実施:38点
12月実施:36点
2019年 35点
2018年 37点
2017年 35点
2016年 35点
2015年 31点
2014年 32点
2013年 33点

合格率

合格率は例年15~18%を推移しています。

受験者数 合格者数 合格率
2020年 204,250 人 34,338 人 16.8 %
2019年 220,797 人 37,481 人 17.0 %
2018年 213,993 人 33,360 人 15.6 %
2017年 209,354 人 32,644 人 15.6 %
2016年 198,463 人 30,589 人 15.4 %

登録には実務経験が必要

実際に宅建士として業務を行うためには、試験に合格後、都道府県知事への資格登録を経て、宅地建物取引士証の交付を受ける必要があります。しかし、資格登録をするためには宅地建物の取引に関する実務経験が2年以上必要となります。
薬剤師として働いてると実務経験は非現実的ですよね。
そのような方のため、登録実務講習というものがあります。この講習を受講することで、2年以上の実務経験がなくても資格登録が可能となります。

 宅地建物取引士証は更新が必要

資格登録自体は、一度登録してしまえば処分などを受けない限り一生有効です。
しかし宅地建物取引士証は有効期間が5年と定められているため、実際には5年に1度、法定講習を受講して宅地建物取引士証を更新していく必要があります。

勉強時間

宅建士試験に合格するための勉強時間は、一般的に300~400時間と言われています。他の関連士業と比べると少ない勉強時間でも合格が可能で、要領がいい方であれば、働きながらでも1~2ヶ月の勉強期間で合格が可能です。

宅建士 300~400時間
行政書士 500~600時間
司法書士 3,000時間程度

すでに行政書士試験を受けた方は「権利関係」の勉強時間を少なくできますし、FP技能検定を受けた方は「税その他」の税金関連の勉強時間を少なくできる可能性があります。

試験の日程

※試験は例年10月第3日曜日ですが、新型コロナウイルス感染症の影響で、10月試験の試験会場での受験可能人数を上回る申込があった場合、一部の方は12月試験を受験することになります。この指定は試験実施団体がするもので、受験生が希望することは出来ません。

【試験申込】
例年7月中

【試験日】
例年10月第3日曜日

【合格発表】
例年12月
(12月試験の指定を受けた方は翌年2月)

薬剤師・薬局業務への活かし方

薬局や薬剤師が関係する法律としては薬剤師法や薬機法がパッと思いつきますが、薬を患者に渡す行為が薬局と患者の契約行為であることを考えれば、民法も大きく関わっていると言えます。事実、調剤過誤が発生したとき、調剤を行った薬剤師は不法行為責任(民法) による民事責任を負います。

宅建士試験における民法はそこまでレベルが高くなく、民法の初歩レベルです。薬剤師や調剤事務が普段の業務を民法的視点から理解するためには程よいレベルと言えます。

また、薬剤師業務を行うためには薬局という建物が必ず必要です。その薬局を建てる際にも、様々な法令上の制限を受けます。そういった制限に関して、宅建士試験の「法令上の制限」で学ぶことができます。

試験データ

資格名 宅地建物取引士(宅建士)
資格区分 国家資格
受験資格 なし
合格率 約15~17%
試験料 7,000円
試験日 年1回 例年10月第3日曜日
問い合わせ先 一般財団法人 不動産適正取引推進機構