精神保健福祉士ってどんな資格?
精神保健福祉士は、1997年の「精神保健福祉士法」施行に伴って誕生しました。
社会福祉士が高齢者や障害者、子供や低所得者を支援の対象としているのに対し、精神保健福祉士は精神疾患を抱える方を主な対象としています。
また、2006年に「障害者自立支援法」、2012年に「障害者総合支援法」が制定されたことで、精神疾患を抱える患者様も入院治療中心から、地域や社会でできる限り生活をおくることが一般的となりました。そういった場合のサポートも含めて、精神保健福祉士の活躍の場は更に広がりつつあります。
以前は「精神科ソーシャルワーカー(PSW)」とも呼ばれていた精神保健福祉士。
しかし2021年4月に、職能団体である日本精神保健福祉士協会が英訳表記を「メンタルヘルスソーシャルワーカー(MHSW)」と変更しました。理由としては、精神障害者のみならず広く国民の精神的健康に寄与するためだそうです。
独占業務
なし。
独占業務はありませんが名称独占なため、資格を保有していなければ精神保健福祉士を名乗ることができません。
受験資格
薬剤師や調剤事務が社会福祉士の資格を取得しようと考えた場合、まず受験資格を満たすのに時間を要します。
精神保健福祉士の受験資格は学歴や実務経験によって11通りあり、大きく3つに分けられます。
◎保健福祉系大学(指定科目履修)ルート
- 保健福祉系大学等(4年)+指定科目履修
- 保健福祉系短大等(3年)+指定科目履修+相談援助実務(1年以上)
- 保健福祉系短大等(2年)+指定科目履修+相談援助実務(2年以上)
◎福祉系大学(基礎科目履修)・社会福祉士ルート
- 福祉系大学等(4年)+基礎科目履修+短期養成施設等
- 福祉系短大等(3年)+基礎科目履修+相談援助実務(1年以上)+短期養成施設等
- 福祉系短大等(2年)+基礎科目履修+相談援助実務(2年以上)+短期養成施設等
- 社会福祉士登録者+短期養成施設等
◎一般大学・実務経験ルート
- 一般大学等(4年)+一般養成施設等
- 一般短大等(3年)+相談援助実務(1年以上)+一般養成施設等
- 一般短大等(2年)+相談援助実務(2年以上)+一般養成施設等
- 相談援助実務(4年)+一般養成施設等
社会福祉士と、それほど大きくは変わりません。
薬剤師が働きながら資格を取ろうと思った場合、社会福祉士と同じく
◎一般大学・実務経験ルート
一般大学等(4年)+一般養成施設等
で目指すのが一般的です。
そのため、薬剤師が受験資格を満たした場合には、社会福祉士と精神保健福祉士の両方の受験資格を満たすこととなります。
一般養成施設は1年~1年半の期間が必要ですが、土日や夜間のスクーリング、eラーニングを用いて、働きながらでも学びやすい環境が整っています。
一方で調剤事務の場合、大学を卒業しているかどうかでルートが変わります。
費用はそれなりに高額ですが、教育訓練制度を利用できる講座が多いです。
試験科目
精神保健福祉士国家試験の科目は全17科目(16科目群)あります。
◎共通科目
①人体の構造と機能及び疾病(7問)
②心理学理論と心理的支援(7問)
③社会理論と社会システム(7問)
④現代社会と福祉(10問)
⑤地域福祉の理論と方法(10問)
⑥福祉行財政と福祉計画(7問)
⑦社会保障(7問)
⑧障害者に対する支援と障害者自立支援制度(7問)
⑨低所得者に対する支援と生活保護制度(7問)
⑩保健医療サービス(7問)
⑪権利擁護と成年後見精度(7問)
◎専門科目
⑫精神疾患とその治療(10問)
⑬精神保健の課題と支援(10問)
⑭精神保健福祉相談援助の基盤(15問)
⑮精神保健福祉の理論と相談援助の展開(25問)
⑯精神保健福祉に関する制度とサービス(12問)
⑰精神障害者の生活支援システム(8問)
社会福祉士との同時受験が可能
社会福祉士と精神保健福祉士の国家試験では共通科目が設定されています。
その名の通り、共通科目に関しては社会福祉士と精神保健福祉士で同じ問題となっており、同じ年度に両方の国家試験を受験することが可能です。
共通科目は11科目で、人体の仕組みや現代社会・福祉行政に関する項目、権利擁護に関わる制度などが出題されます。
一方、専門科目は精神保健福祉士の場合6科目(社会福祉士は8科目)で、社会福祉士・精神保健福祉士それぞれの業務で必要な知識・技術について出題されます。
なお、社会福祉士の資格をすでに持っている場合、精神保健福祉士試験の共通科目は免除となります。
合格ライン
国家試験の合格ラインは、下記の2つの条件を満たす必要があります。
- 問題の総得点の60%程度を得点。(問題の難易度により補正あり)
- ①を満たした者のうち、16科目群すべてにおいて得点があった者。
これはつまり、すべての科目(16科目群)で1点以上得点を取る必要があるということです。そのため、苦手科目を得意科目でカバーすることができません。試験範囲は非常に広いですが、満遍なく勉強して穴を作らないことが重要となります。
※合否判定においては、⑯精神保健福祉に関する制度とサービス(12問)と⑰精神障害者の生活支援システム(8問)の2科目を1科目群として扱います。
合格率
近年の試験では60%台前半の合格率で推移しています。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
2021年 | 6,165 人 | 3,955 人 | 64.2 % |
2020年 | 6,633 人 | 4,119 人 | 62.1 % |
2019年 | 6,779 人 | 4,251 人 | 62.7 % |
2018年 | 6,992 人 | 4,399 人 | 62.9 % |
一方で社会福祉士試験の合格率は25%~30%で推移しており、精神保健福祉士試験の方が合格率が高いことが分かります。
勉強時間
精神保健福祉士資格試験に合格するための勉強時間は、少なくても150時間が目安とされています。しかし、そもそもの受験資格を満たすための過程が様々なため、あくまでも目安と捉えておいた方が良いでしょう。
試験の概要
精神保健福祉士試験は、例年2月上旬に実施されます。
※2021年度の場合
【受験申込書の受付期間】
2021年9月9日~10月8日
【試験日】
2022年2月5日~6日の2日間
【合格発表】
2022年3月15日
薬剤師・薬局業務への活かし方
世の中には様々な疾患を抱える患者様がいる中で、精神疾患は非常に専門的です。そのため、社会福祉士とは別に、精神疾患を抱える方専門のソーシャルワーカーが精神保健福祉士です。
医療においても同じで、精神疾患を抱える患者様に適切な医療を提供するためには、専門的な知識が必要です。薬剤師が精神保健福祉士の勉強をすることで、精神疾患を抱える患者様に対する理解が深まり、より専門的で適切な医療を提供できるようになります。
試験データ
資格名 | 精神保健福祉士 |
---|---|
資格区分 | 国家資格 |
受験資格 | あり |
合格率 | 約60%前後 |
試験料 | 【精神保健福祉士のみ】24,140円 【社会福祉士と同時受験】36,360円 【共通科目免除】18,820円 ※令和3年度試験の試験料 |
試験日 | 年1回 例年2月上旬 |
問い合わせ先 | 社会福祉振興・試験センター |